6節 年金問題の要点

年金には入り口に3つある。

 国民年金,厚生年金,共済年金だ。

 3つに共通している事は,すべて基礎年金部分というものを持っていて,国民年金は基礎年金部分しか持っていない。この基礎年金というのは,必要最低限の年金支給を予定しており月7万弱の年金が支給されている。

 基礎年金はすべての年金の土台になっているが,厚生年金,共済年金はその上にさらに積み立てを行っている。つまり年金が2段階になっている。2段階目の年金は支払額、支給額が給与に比例して大きくなり,高給な人はその分支払いも支給も多くなる。

 また,年金は一部積み立てを行っているが,大部分は賦課方式で行っている。賦課方式とは,現役世代から徴収したお金をそのままその時の高齢世代の年金に利用するという方法である。なのであなたが支払った年金保険料はほとんど残っておらず,すでに年金として支給されている。あなたの年金支給額が金額だけが記録されており,支払いが約束されているだけになる。国が改ざんしようと思えば容易にできるのである。

 実は公にされていないが,この他人任せの方式のために厚生年金が被害を被っている。

 国民年金の支払いは任意,厚生年金は強制という点に落とし穴がある。

 つまり国民年金の未納者が近年4割を超える勢いで急激に増加しているため,国民年金には年金を支払うお金が不足している。それを補う形で厚生年金からお金が流用されている。国民年金の額と厚生年金の額は規模が違うので未納の影響は微々たるものだが,厚生年金が損失を被っている事は確かである。

 将来年金がもらえないから払わないというのは,自分勝手な意見であり,支払わない事による損失は,その人ではなく高齢世代や厚生年金支払者が被る。未納者は知る由もない話だが。

 さて,みなさんの興味のある点は,はたして年金を支払う事は得なのか損なのかという点であるが,これはほぼ100%得だと言える。つまり年金は支払うべきなのである。

 ほぼと言ったのは一部の人にはあてはまらない可能性があるからだ。つまり,相当な金融の知識を持ち合わせていて,物価や利率、リスク等についての理解があり分散投資のできる人ならば自己責任で運用をした方が得になる可能性はある。

 上記の話は,年金が支払われる事を前提に話している。たまに将来年金は支払われないから保険料は未納のままでよいと言っている人がいるが,これは愚の骨頂だと言える。

 上記の意見は思考が完全にストップしている人の意見だ。

 つまり,将来の年金の支払いには,将来の現役世代の保険料が使われる訳であるから,額が減る事はあっても支払いがなくなる事はありえない。現役世代が0になり高齢者のみの国になれば話は別だが。

 また減額される可能性は高くても,減額された分を税で補う政策がとられる可能性が非常に高い。これは人口動態上,将来の日本は高齢世代の割合が4割近くになり未成年を除いた有権者の中の割合でいうと5割を超える可能性が出てくるので,年金減額を容認する政府は弾劾され,年金額を維持する政府が存続する事は容易に予想されるからである。

 今時点でも年金額を維持するために税が投入されている。

 国民年金の支給額の税の割合は2009年に1/3から1/2に上がった。これは現役世代の減少による年金の減額を防ぐために行われた政策だ。

 年金減額が容認される社会は,崩壊している社会なので,年金どころの問題ではないはずである。

 そもそも少子化が進んでいるのは日本の産業構造や機械化の進行が1番大きな影響なので,少子化が進んでも日本全体の所得に大きな変化はでないはずである(生産性は向上しているので1人当たりの所得は向上している)。なので現役世代の支払額が増えるので,年金崩壊はありえない。

 崩壊する1番の原因は年金に不安を感じ,消費を控えて経済全体を萎縮させている国民の行動なのである。

 次回は少子化が進む構造的な問題について解説する。