15節 公共財

公共財は,使用する人数が増えても減らないモノ,つまり万人が等しく享受出来るモノである。では,公共財の価格はどのように決めればよいのだろうか?

 価格は本来,需要と供給から決まるものだが,政府が供給する公共財は市場で販売されていないので,需要が分からない。つまりこの場合の価格は,供給のみから決まる。よって生産にかかる費用がそのまま価格になる。

 では,公共財を作るか否かはどのように決めればよいのだろうか?

 消費財私的財,りんご等)と違い,限界効用が価格より高ければ購入という単純な話ではない。今回公共財を享受するのは,日本で公共財を供給するなら日本国民すべてが対象になるからだ。では,日本国民すべての限界効用を測定して,その合計値が価格より高ければ購入すればよい。

 数学的には,日本国民全体の幸せを示す効用関数を設定して,その関数のパラメータに公共財を組み込み,効用関数を公共財で微分すれば,国民全体の限界効用が求められる。

 実際は効用関数が分からないので,政府が代表して国民の意見を調べている。つまり政治に関係してくる。間接民主制を採用している日本は,国会議員の意見が国民の意見とされる。つまり国民の限界効用を国会の審議で決める訳だ。そしてフリーライダーが生じないように公共財の費用を税で徴収する訳だ。

 税でフリーライダーは防げるが,逆にその公共財を全く利用しない国民は余分な税を払う事になる。

 この場合、自己申告にすると過少申告をしてフリーライダーが生じるので,転嫁の方法が用いられる。

 この例を自動車用道路の建設を例に考えてみよう。

 車を利用しない人には必要ないので,利用する人のみに課金したい。だが,高速道路のようにすべての道路に料金所を設置するのは非効率だ。

 そこで,車自体に税を課す。これを道路から車に税を転嫁するという。これが自動車所有税,重量税,ガソリン税となっている。

 次は限界効用の高い人からより多く徴収したい。効用の高い人ほど道路をよく使うのでその分ガソリン税を多く払う。また大きい車に乗る人ほど大人数で乗る事が多く,長距離走る事も多いので自動車所有税を沢山徴収する。また大きい車は道路を傷めるので,重量税も高くなる。

 このことから長距離,大人数乗車に適さない軽自動車は税金が安いのである。軽自動車に4人乗りで長距離運転している人はフリーライダーをしているとも言えるかもしれない。

 次回は,税の転嫁の典型である消費税について説明する。