16節 消費税による税の転嫁

昨今,消費税引きあげの議論が取り沙汰されているが,みなさんは消費税は実際誰が支払っているかご存じだろうか?

 例えば,消費税が10%引き上がり15%になれば,すべての財の価格は今より10%上がるだろうか?

 答えはノーである。

 つまり,消費者が消費税をすべて払っている訳ではない。生産者も同時に払っているのだ。そもそも消費税を直接支払っているのは生産者であり,消費者から受け取った税を政府に支払っている。つまり,支払い義務があるのは生産者で,税の一部を消費者に転嫁しているのである(値上げという方法で)。このことから消費税は間接税と呼ばれる。

 では,消費者と生産者は各々どのくらいの割合で税を負担しているのか?

 これは,製品によって異なる。つまり税の転嫁をしやすい製品とは,供給者が少数で競争相手がいなく値上げをしやすい製品といえる。この場合は,ほぼ税の引き上げ分の値上げが行われるので,消費者がほぼすべて支払う。電気料金等は典型である。

 逆に競争相手が多ければ,値上げは困難なので,生産者が利益の一部を税に充て,消費者にはほとんど転嫁されない。チョコレートや牛乳等は値上げが困難だと思われる。

 経済学的には,価格が上がった際に急激に需要の減る製品は値上げが困難である。この製品は,需要の価格弾力性が高いという。このような財は,旅行やケーキや宝石等の贅沢品や高級品が多い。このような財の税の転嫁はあまり行われない。だが,米などの必需品は,購入量をあまり減らせないので,需要の価格弾力性が極めて低い。よって値上げが容易である。つまり税をほとんど消費者が負担する。

 ここでの問題はなんであろうか?

 それは低所得者ほどより必要とする必需品に税の負担が集中していく事である。本来は低所得者ほど税の負担を軽くすべきである。所得税はこの原則に則っている。この問題を消費税の逆進性という。

 公平性の観点からは,望ましくないが効率性の観点からは望ましい。

 次節では,効率性と公平性のトレード・オフについて消費税のアプローチから説明する。