7節 少子化の構造的要因

日本の人口は,過去数十年1億2000万付近で停滞している。なぜか考えた事があるだろうか?

 これは,日本という国土が持てる最適な人口水準だという事である。

 ある一定の土地が養える人間の数には限界がある。

 ある家族がある農地を保有していて自給自足の生活をしていると仮定しよう。

 家族が増えれば労働力が増えるのでより多くの農作物を作る事ができるだろう。これは人数が少ない時の方が顕著で1人から2人に増えれば農作物は2倍以上に増える。でも同じように1人増える場合でも6人から7人の場合は1人から2人より増える量は少なくなる。落ち穂拾い等のあまり生産性の高くない仕事を引き受ける人が増えるだけだからである。これを限界生産性逓減の法則と前の章で説明した。

 あまり家族を増やすと消費が生産量を追い越して,その家族は餓死してしまう。また消費と生産量が等しくても余剰が生まれないのでその農家は販売用の農作物がなくなり他のモノを消費するお金が生み出せない。

 最適な家族の人数とはどのようにして決まるのか?

 人間1人の食べる量が一定だと仮定すると,生産量は家族が増えると家族の人数が多くなるほど追加的な生産量の量は減少していくので,家族を1人増やした時,追加の生産量>追加の消費量(一定)ならば家族を増やした方がよく,逆の場合ならば家族を減らした方がよい。

 最適な家族の人数とは追加の生産量=追加の消費量(一定)となる場合である。

 この話を日本国土で考えてみよう。この場合の家族は日本国民全体である。

 最適な日本国民の数は,現在の値で一定に推移している所を見ると最適なようである。

 つまり高齢化が進んで日本の人口が死亡で減りづらくなっただけ,総数を一定に保つためには,少子化が進まざるを得ないのである。少子高齢化は起こるべくして起きているのである。

 少子化を改善するための子供手当は小手先の対策に過ぎず,少子化を解決する方法は以下の2つしかない。

 1つは,高齢者を減らす方法である。これは難しい。というか医療が進む日本ではほぼ不可能な事であろう。

 もう1つは,日本国民の総数を増やす事である。上記の話に従えば,日本全体の生産性を上げればよい。

 農作物を耕す場合に,生産性を上げる方法として色々ある。肥料を蒔く,農具を充実させる,その土地に合った農作物を栽培する,農業教育を施す,新しい品種を作る(緑の革命),個々人の能力を最大限に利用する(サボリや適所適材を心掛ける)等がある。

 日本の産業全体で言い換えると,インフラ整備をする(道路、橋等),生産設備を充実させる,日本の風土にあった産業を育成する,教育水準を上げる,技術革新を促す,日本人の能力を活かせる産業を育成する等になる。

 少子化を改善する方法は上記のようなものになる。

 子供手当は1人当たりの消費を補助するので,追加的な消費量を国民の自己負担で見ると少なくし,本来より日本の人口を過剰に増やし,日本の生産性を下げている。また子供手当の財源は税金なので,本来ならば消費や投資に回る資金が税を通じて子供手当という非効率なモノに使われているのでますます生産性を下げている。よって最悪の政策である。近視眼的すぎて笑止である。

 その財源を教育や技術革新の布石にかければどれだけ日本のためになるか想像も難くない。