1節 IS-LM分析

マクロは国の動きについて分析していく訳だが,まずはモノの流れとカネの流れの2つについて分析していく。世の中の取引の9割以上はカネについてで,モノの流れはカネの流れに付随して起こるのでカネの流れを理解する事が大切である。

 カネについても間接的な価格がつけられている。モノと同じでありあまってる時は安くなり,不足している時は高くなる。もちろんカネの価格をカネで標記すると混乱をきたすので,別の標記がなされている。

 それが,利子率である。

 利子率が低いとカネが余っているので,経済は利子率が上がる方向に動く。具体的には,預金者は利息があまりつかないので,運用資金を株式等に流用し,会社等は借り入れを増やす。よってカネの供給量が減り,需要量が増えるので,利子率が上がる。

 利子率が高い場合は逆の現象が起こる。では,利子率はどのように決まるのだろうか?

 利子率に影響を及ぼす要因は,モノの動きとカネの動きの両方がある。

 モノの動きに影響を及ぼすのは,投資と貯蓄である。投資の方が多いとお金が足りなくなるので,投資を減らすか貯蓄を殖やすかで対応しなければならない。投資を減らすには利子率の上昇,貯蓄を増やすにはGDP(国内総生産)の増加が必要となる。両者の変化は,投資と貯蓄が一致するまで続く。両者が一致する利子率とGDPの組み合わせというのが無数にあるのだが,それを直線で結んだモノをIS曲線という。Iは投資(Investment),Sは貯蓄(Saving)である。

 カネの動きに影響を及ぼすのは,マネーと供給と需要である。マネー供給量は日銀が決めるので,一定である。但し,需要量は,利子率とGDPによって変化する。

 そもそもマネーの需要には2種類ある。投機的需要と実用的需要だ。

 投機的需要とは,マネーを増やそうと思いマネーを持つことで,利子率が上がった時,国債等の方が魅力的になるので,マネー需要が下がる。逆に利子率が下がれば,相対的にマネーを持つ旨みが増すので,マネー需要が増える。

 実用的需要とは,買い物のために必要となるマネー量で,GDPが上がれば,所得が増え消費が増えるので,実用的マネー需要は上がる。マネーの供給と需要が一致しなければならないので,供給より需要が多い場合は,利子率が上がるかGDPが下がるかして対応する。また供給の方が多い場合は,利子率が下がるかGDPが上がるかして対応する。

  両者を一致させる利子率とGDPの組み合わせが無数にある。これを結んだ曲線をLM曲線という。Lは流動性(Liquid)でMはカネ(Money)である。

 縦軸に利子率(r),横軸にGDPを取るとIS曲線は右下がり,LM曲線は右上がりになる。両者が一致する点で,モノとカネの両者において受給が一致するので,均衡状態になる。この時,経済の利子率とGDPが決定する。

 両者の曲線を用いた分析をIS-LM分析という。

 次回は,三面等価について説明する。