28節 独占企業の存在意義

独占企業は効率が悪い。なぜならば,競争が発生しないからである。

 効率が悪くて経費が高くついても,価格競争がないので,そのまま経費の増加を価格に転嫁できる。効率の悪さの代償を消費者が払う事になる。独占企業をほっといていい訳がない。でも,なぜ独占企業が生まれるのだろうか?政府が参入障壁を設けない限り,参入は自由である。ただ参入する側も利益が出なければ参入はしない。

 代表的な独占企業は,電力会社であろう。地区ごとに何社かに分割されているが,個々の地区で見れば完全な独占状態である。例えば,東京都の住民は,東京電力以外から電力を購入するのは難しい。東京電力が料金を値上げすれば,そのまま受け入れるしかない。

 勿論,無差別な値上げを抑えるために政府は電気料金に何らかの規制をかけている訳だが,電力会社により効率的にして経費を下げて,価格を下げるインセンティブは中々生まれて来ない。よって独占というのを何とかすべきなのだが,実は電力会社には独占にならざる得ない特殊な事情がある。

 それは,事業を始めるにあたって莫大な初期費用が必要な点だ。発電所の建設,各地への電線の配置等,例え1世帯に供給するとしても必要になる。逆に追加的に1世帯増加しても,電線を少し延長すれば済むので,供給する世帯が増えれば増えるほど効率はよくなる。

 つまり,多数の会社が参入すると1社当たりの供給する世帯が減るので,初期費用を回収できず潰れる可能性が出てくる。新規参入者はこのことを見越して参入を控える。

 結果的に独占状態が生まれるのである。このように巨額な初期費用が必要な業界は独占にならざる得ない。