29節 2章のまとめ

これまでミクロ経済学の基礎について説明してきた。

 ミクロ経済学は個人の考えや行動に分析の焦点を当てているため,万人が普段無意識に考えている事を改めて説明した理論が多い。

 ミクロで分析した個々の家計や企業が集まって行動している事で,大きな動きを形成していく。それが,国の行動となる。3節では,国の行動に注目したマクロ経済学について説明していく。マクロ経済学は大別して2つの分野に分ける事ができる。1つは,財政・金融政策に関する内容,もう1つは景気循環・経済成長に関する内容である。

 1つの問題は,マクロ経済学は学部レベルと大学院レベルで別次元の理論が展開されている事だ。

 大学院レベルになると高度な数式が必須となるため,言葉ではとても説明できない。今回は学部レベルの理論について説明する。

 但し,学部レベルといっても内容としてはかなり高度で,日本国内にもよく理解している方は少ないように思われる。少なくとも日経新聞に使われているマクロ理論は学部の初歩中の初歩なので,学部レベルのマクロが理解できれば,経済情勢に関するニュースはほぼ100%理解できるはずだ。

 また,大学院レベルのマクロを理解するためには,大学院レベルの高度なミクロの理解が必要だが,高度なミクロを説明するために学部のマクロが必要となってくる。3節では,学部マクロを説明し,4節以降では,応用ミクロ,マクロ理論を織り交ぜながら現実の経済問題について議論する。

 1つ注意しておきたいのは,経済学の理解には,ミクロ・マクロ以外に計量経済学の理解が必要だという点だ。計量は回帰分析を始めとした経済分析手法の理論であり,余裕があればコラムを通じて概要を説明する。

 大抵,ニュースで取り上げられる問題はマクロ経済学を基礎としている。なので,マクロの方がより実用的だと考える人も多い。但し,マクロな現象を作っているのはミクロなので,ミクロが理解できていないとマクロをしっかり理解する事は困難である。

 次回は,マクロ経済学について説明を始める。