26節 Winner's Curse

みなさん。オークションサイトで商品を落札した事があるだろうか?

 落札した時あなたは本当にお得な買い物ができたのだろうか?

 本当にお得な買い物なら,なぜ出品者はその商品を出品したのだろうか?

 なぜ他の落札者は値を上げなかったのだろうか?

 ある商品に対する価値は万人で違う。りんごに10円の価値しか見いだせない人もいれば,1万円の価値を見いだす人もいる。

 後者の人は5000円でりんごが買えれば儲けもので,前者の人は200円で売れれば儲けものである。つまり同じものでも1人1人見いだす価値が違う訳である。

 ではオークションで落札するのは,どのような人なのであろうか?

 基本的には,その商品に最も価値を見いだしている人である。

 ただ,例外もある。そもそも自分の見いだす価値の価格で,落札してもその人にとって全く儲けはない。むしろ,落札までの手間賃を含めると損失の方が大きい。

 つまり,落札価格は常に自分の見いだす価値未満になる。その乖離が大きいほど落札した時の儲けも大きいが,落札できない可能性も大きくなる。

 その両者のおいしいとこを考えて入札する事にオークションの面白さはある。

 でもどんな入札価格であろうともし落札をすれば,落札者は1円安くしても落札できただろうと常に自分の落札価格について後悔をする。

 落札者は,ある意味その商品を最も高い値段で買わされたと言えるのである。これを勝者の呪いという。

 このことを恐れるあまり,入札者は入札額を必要以上に過小にする可能性が出てくる。

 次節では,この問題を解決するセカンドプライスオークションについて説明する。大手のオークションサイトはこの方式を採用している。