24節 サンクコスト

あなたがある映画を見にいこうと考えている。チケットは1000円で,その映画に対して1500円の価値(限界効用)があると考えている。行く途中,チケットを落とした場合,さらに1000円払ってチケットを買い,映画を見る価値はあるだろうか?

 答えはイエスである。

 多くの人は,結局2000円払って1500円の価値の映画を見れば500円の損だ!もったいないと考える。確かにそのとおりだが,見なければ落としたチケット代1000円の損になるので,見たほうがまだましである。

 なぜならば,落とした後,もう一度チケットを買えば500円の便益が得られるからである。落としたチケットは,追加的にチケットを買うときの判断になんら影響を及ぼさない。このようなコストをサンクコストという。

 サンクコスト問題は,国の建設事業等でよく用いられる。

 例えば,当初便益が1兆円で建設費が5000億の橋の建設工事が予定されていたとする。便益の方が費用より高いので,建設するべきだが,建設費2500億円を使い半分工事を終えた時点で3000億円の便益にしかならない事が判明した。この工事は中止するべきだろうか?

 ここでやめれば,費用2500億円の損失で,実行すれば,5000億円の費用で3000億円の便益が得られるので,2000億円の損失となり,実行した方がまだましである。この場合もすでに使った2500億円はサンクコストなので,建設を続けるか否かには影響を与えない。

 過去の失敗に影響される事なく,選択をすべきである。

 例えば完成まで2時間かかる模型作りをしていて,完成直前で間違いに気づき1からやり直す場合でも,失敗は再度やり直すか否かに全く影響を与えない。失敗後に直面する問題は,2時間かけて模型を作るか否かであり,失敗した2時間は,もはや手のつけようのない過去の失敗で変えられないのである。

 模型作りに4時間かかった訳ではない。

 多くの人々は,サンクコストに影響を受け,合理的な選択ができなくなっている。常にサンクコストか否かについては考えてみてほしい。

次回は,ナッシュ均衡について説明する。