23節 操業停止点と損益分岐点

働いて赤字を出すとはなんか変ではないだろうか?

 働かなければいいのではないだろうか?

 この質問について考えてみていただきたい。

 実際,赤字の企業の中では倒産する企業と存続する企業がある。その違いはなんであろうか?

 ここには,固定費用が大きく影響している。

 例えば,多くの企業は銀行から融資を受けているが,毎月その返済をしている。この返済額以下の赤字ならば,操業した方がよい。操業をやめれば,その企業は赤字分返済する必要があるからである。

 このように企業には,何もしなくても発生する費用が存在する。この費用を固定費という。固定費以下の赤字ならば操業を続けた方がよい。

 また,材料費や人件費は操業しなければかからない。このような費用を変動費という。

 固定費と赤字が等しくなる点を操業停止点という。ついでに利益が0になる点を損益分岐点という。

 よって赤字が出ても存続する企業が存在する。

 では,操業停止点を下回った企業はすべて倒産すべきだろうか?

 政府はよく大手の赤字企業を救済する。固定費以上の赤字を出す企業を救済する必要はどこにあるだろうか?

 答えは雇用の問題にある。

 大手が倒産すれば大量の失業者が出る。彼らの当面の生活費は,雇用保険や税金によって賄われ,多くの場合,救済費以上にかかる。よって将来の雇用を守るため救済をするのである。

 救済はすれば失業は生じないので,世間では赤字企業を助けるために政府は救済しているように見える。でも,本当の目的の一つは失業の発生による歳出の拡大の防止なのである。

 次回はサンクコストについて説明する。