住宅購入は、毎月の支払額ではなく支払総額を確認すべし!

世の中のほとんどの物品は一括で購入するものばかりで、家に関してはほぼ全ての方がローンで購入していると思います。カーローンを組む方もいますが、金利が高いですし、車は現金一括で買える金額内の車に乗るべきだと思いますので、私がローン購入すべきだと思うのは、住宅のみです。

住宅をローンで購入すると住宅ローン控除で税金が何十万円も返ってきたり、あり得ないくらいの低金利で借りることができるので、現金一括で買える人もほとんどが敢えて戦略的にローンを組んでいるくらいです。

家をローンで購入した時点で、皆さんが毎月支払うのはローン返済額になり、どこかで購入総額のことを軽視するようになります。住宅の販売側としてはできるだけ高い家を売れば、利益が多額になるので、どうにか高い家を売ろうとします。もちろん購入側はできるだけお得に買いたいと思います。人は不思議なもので、ある一定以上の資産を持つようになると、安くものを買おうとするのではなく、できるだけ良いものを安く買ってお得感を感じたくなるようです。ある程度お金に余裕がある人は、できるだけ見た目も高級で、内装もおしゃれで、高気密高断熱の住宅をお得に買いたいと考えています。

例えば、ローコストの住宅が2500万円で売ってあり、高性能な住宅が3500万円で売っているとします。35年ローンで借りるとします。

色々とシミュレーションをして、初回のローン返済額を見てみます。

1.変動金利0.4%で借りた時

2500万円の借入で、毎月の返済額64000円、総支払額2680万円になります。

3500万円の借入で、毎月の返済額90000円、支払総額が3752万円になります。

2.35年全期間固定金利1.8%で借りた時

2500万円の借入で、毎月の返済額81000円、総支払額3372万円になります。

3500万円の借入で、毎月の返済額113000円、総支払額4721万円になります。

支払額だけ見たら、圧倒的に2500万円の住宅の方がお得に思えますが、3500万円の住宅は高気密高断熱になるので、毎月の光熱費が平均で10000円安くなると言われ、追加で300万円で太陽光と蓄電池を導入すれば、毎月売電も併せて、導入前より2万円節約と収入でプラスになると言われたとしましょう。

変動金利0.4%で300万円追加した3800万円をローンで借りると

毎月97000円の返済で、返済総額は4073万円になります。

ここから太陽光、蓄電池の2万円のプラスと高気密高断熱の電気代節約5000円を加えると、実質の毎月支払額は、72000円にまで削減します。販売側は、ローコストで2500万円で買っても、毎月64000円かかるのに対して、3800万円の高性能住宅(太陽光、蓄電池付)を買えば、毎月の実質返済額は72000円となり、たったの8000円しか違わないと説明し、アピールします。冬暖かく、夏は涼しく、しかも高価な住宅がたった8000円のプラスで買えるならお得と感じて、購入を決める例が本当に多いです。人間って不思議なもので、毎月の支払額が固定なら、その金額に慣れてしまい、そこからいくら安くなるかに敏感になります。毎月6万円の支払いよりも、毎月8万円の支払いだけど、太陽光の売電収入で2万円入ってきて、実質6万円の方がお買い得感があるのが良い例です。

ここまでの説明を聞いて、絶対実質72000円で高性能な3800万円の住宅を手に入れた方が得と考える方がほとんどだと思います。実際この方法で高性能住宅を販売している住宅メーカーが今日本で一番売れています。私はこの状況を非常に懸念しております。この72000円の支払いを実現するためには、危ない2つの条件を前提としているためです。

皆さんが家を買えば、原則35年間、ローン返済が続きます。例え毎月8000円の違いでも1年で96000円の違いになり、35年で336万円の違いになります。こんな違いは微々たるもので、恐ろしいのは購入してから10年後です。まず売電の固定買取期間が終わり、太陽光パネルが発電していた電気の多くは、買い取られても単価8円とかになり、蓄電池も故障のリスクが出てきます。実際の利益は10年後は2万円から5千円くらいに激減します。実質の支払額が10年目以降は15000円増えて87000円になります。さらに、先ほど固定金利が1.8%、変動が0.4%と説明しましたが、長期スパンで見れば、固定金利と変動金利は同じ動きをしていく傾向にあります。昨今固定金利が上がってきておりますが、これは将来変動金利の上昇が予想されているため、先に固定金利が上がってきているのです。過去の日本でも実際にありましたが、変動金利が3%程度まで上昇する可能性は十分にあります。実際アメリカでは今それ以上の上昇があり、ローン破綻が出てきております。仮に10年後に変動金利が3%に上昇し、売電の影響も弱くなった時に、ローコストと高性能の太陽光・蓄電池付住宅の毎月支払額や支払い総額がどのようになるか調べてみましょう。

2500万円のローコストの場合

10年目までは毎月64000円の支払いで、10年目以降は毎月86000円で急増します。

なお支払い総額は3356万円になります。

3800万円の高性能住宅(太陽光・蓄電池付)の場合

10年目までは、毎月97000円の支払いから、光熱費節約5000円、太陽光・蓄電池効果20000円の削減を加味して72000円になります。

10年目以降は、毎月131000円に急増し、5000円の光熱費削減効果は続くと仮定すると、実質126000円になり、太陽光・蓄電池効果も5000円は続くとすると、121000円まで下がります。

支払い総額は5100万円になりますが、光熱費節約が年額6万円×35年=210万円、太陽光効果が10年目までに240万円、10年目以降の25年間は6万円×25年=150万円で差し引き4500万円になります。

購入時の毎月の支払額が8000円の差だったのに、35年で金利上昇や太陽光の売電の変化などを考慮すると、支払い総額は1150万円程度になり、毎月の支払額は10年目以降は、35000円となり激増しています。

このシミュレーションは、十分現実的な状況を示しており、可能性は十分にあり得るものです。

実は、ローコストの2500万円で見れば分かりやすいのですが、35年1.8%の固定金利で借りた場合の支払い総額が3372万円、変動で安く借りて、途中で高くなる場合で、3356万円となり、16万円の違いで微々たる差になっています。金利の変動を恐れる必要がない分、例え35年で16万円高くても全期間固定を借りる価値も十分あります。現にこのへんの知識がある方は長期的な視野で全期間固定を借りています。

もちろん住宅購入に正解はないですし、高性能な住宅はとても快適な生活ができることは間違いないですが、支払い総額で見れば、ローコストと比べて相当高くなる覚悟で買ってください。間違っても最初の毎月の支払額が近いから金銭的にお得に高性能住宅が買えるとだけは思わないでください。

かと言って、ローコストがおすすめではありません。ローコストは確かに安く買えますが、住宅性能では劣るのでおすすめできません。

結局は、築浅の高性能住宅をローコスト以下の価格で購入し、安くリフォームして、ローコスト以上の高性能住宅にして、ローコストより安く購入するのが最強となります。