高気密高断熱住宅にすると光熱費をいくら削減できるのか!? Ua値0.65→0.33を検証!

高気密高断熱住宅って憧れますよね。ネットでは、最近高気密高断熱住宅が大ブームで、多くの論調では、高気密高断熱住宅は初期費用が高いが、その後のランニングコストが安くなるので、結果的にお得である。つまり、総支払額はローコストの建売などより安く済むし、年中一定の室温で快適な環境も手に入るし、家自体が高性能だと将来高く売れるというわけです。

こんな話を聞いていると、なんとしても超高性能住宅に住みたいと考えてしまうのが人の常ですが、多くがポジショントークなので注意が必要です。大抵このような話をされている方というのは、高気密高断熱住宅に住んでいるオーナーか、高気密高断熱住宅を売り出しているハウスメーカー工務店の関係者となります。もちろんですが、オーナーは自身の家を肯定する意見を述べますし、住宅会社の関係者も自身の家を売りたいため、メリットばかりを述べます。さらに厄介なのが、世間が高気密高断熱住宅に注目しているので、この話題をYoutubeなどで取り上げると再生数が伸びるなどの理由もあります。もちろん、ネガティブな内容でも再生数は伸びるかもしれませんが、スポンサーはつかないんですよね。つまり、高気密高断熱住宅のメリットを述べた動画がヒットすれば、そこには高気密高断熱住宅の広告がつきます。投稿者の儲けにもなるわけですよね。オーナーも自身の家をYoutubeなどで公開し、住宅会社の売り上げに貢献することで、様々な恩恵を住宅会社から受けることもあるようです。一番多いのは紹介制度ですね。つまりYoutubeやブログを視聴や閲覧した方へ住宅会社を紹介して成約すれば、双方に住宅会社からキャッシュバックがあるわけです。多くが10万円以上のため、メリットが大きいです。この仕組みは住宅会社にとっても大きいわけです。集客コストをかけなくても数十万円払うだけでお客が手に入るわけですから。住宅販売の利益は数百万円になりますから紹介料など安いもんです。

話が脱線しましたが、高気密高断熱住宅の最大のメリットは、月々の光熱費を安く抑えられることだと思います。快適性を強調する方もおられますが、今時の建売などもかなり高性能になってきておりますので、エアコンを常に起動し、光熱費をかければ、ほぼ同等の快適性を手に入れることは可能です。つまり、いかに安く快適性を手に入れるかの話です。また高性能な家ならば、高く売却できるとありますが、大きく差がつくことは稀です。というのも、中古市場において断熱性能や気密性能というのはほぼ評価されません。今後は評価されるかもしれませんが、中古市場においては、立地や劣化具合などの他の要因のほうが価格には影響を与えますし、そもそも築年数が古くなればなるほど建物価格は0に近づくので売却時の利益は考えないほうが良いです。

では実際に高気密高断熱住宅にするとどれくらい光熱費が節約できるのかシミュレーションしたものがありますので参考に共有します。これは、実際に工務店の方に作成いただいた結果となっております。

ここでは、今時の建売と同等の性能Ua値0.65の家と高性能住宅Ua値0.33の家を比較してみましょう。

なお、東京などを含む日本の多くの地域(6地域)では、Ua値0.26以下でHEAT G3(断熱等級7)の最高性能になりますので、シミュレーションの家は、かなり最高性能に近い家になります。

 

 

私の率直な感想ですと、たいして変わらないなと言ったところです。もしもっと断熱性能上げてUa値0.26の超高気密高断熱住宅にしても年額3万円も違わないでしょう。例え50年住んでも差額は150万円です。とてもじゃないですけど、もとは取れません。しかしYoutubeなどでは、毎月の電気代が0円どころか逆に売電で収入が入ったなどという眉唾の情報で溢れております。また、引っ越しで電気代が年額20万円下がったなどの情報もあります。なぜシミュレーションと違う結果になるのは明確です。理由は以下の2つです。

1.太陽光蓄電器を搭載して、売電、蓄電、自家消費により電気代節約どころか収入を手に入れる仕 組みを作っている。

2.新築建売から新築高気密高断熱住宅へ引っ越す人はほぼ皆無なので、ほぼ無断熱の賃貸や築古住宅から高気密高断熱住宅に引っ越して、その両者の差額を公表している。新築建売との比較動画はほぼない。

太陽光・蓄電器の影響は絶大です。大手の住宅会社などでは、10kWの太陽光パネルと7kWの蓄電池をオプションで200万円程度払えばつけてくれるところや5kWの太陽光パネルを標準でつけている住宅会社などもあります。正直10kWの太陽光パネルと7kWの蓄電池を搭載した家で、平日は共働きで日中不在にしていれば、売電し放題、蓄電池に充電し放題で、売電収入も貯まり、夕方から朝の電気もほぼ蓄電池で賄えてしまう可能性があるので、売電で月々の電気代が黒字になる可能性も十分にあります。しかし、これは高気密高断熱住宅だからというよりも太陽光パネルと蓄電池の能力のおかげということになります。しかも売電収入の多くは最初の10年間のみで、10年経過すると売電収入は政府の支援がなくなり、安くなるため状況が一気に変わってしまいます。しかも蓄電池は寿命が短いので15年程度で故障する可能性もあります。そもそもが売り出し価格も、購入時に安く買えるだけで、本当は高い太陽光・蓄電器を安く見せているだけです。つまり、住宅価格が本来2900万円、太陽光・蓄電器が300万円のところ、住宅価格3000万円、太陽光・蓄電器200万円と表示しているだけということです。実際にこのような住宅会社は第三者に対して決して同じ価格で太陽光・蓄電器を販売しません。太陽光・蓄電器の分だけ安くなった電気代は、この初期費用の回収に充てるべきなので、実際に高気密高断熱住宅の効果により削減できる電気代は年間3万円程度が関の山です。

さらに、夫婦共働き、土日外出の多いご家庭の場合、家への滞在時間が短くなるため、冷暖房費用がもともと安く、高気密高断熱住宅にしてもあまり削減ができないかもしれません。矛盾するようですが、高気密高断熱住宅にお住まいの方は、高所得者が圧倒的に多く、高所得者の多くは多忙のため、留守にしがちです。子供の教育にも熱心なご家庭が多く、外出する予算もたっぷりあるため休日に家族で自宅でダラダラ過ごすのではなく、積極的に子供のスポーツに付き添ったり、様々な施設にお出かけしている例が多いです。逆にローコスト建売に住むご家庭の場合、どうしても世帯平均所得は高気密高断熱住宅にお住まいの方よりも低くなってしまい、外出する予算的な余裕もないことから、在宅率が高くなります。せっかく高気密高断熱住宅に住んでいても、不在の場合が多く、高性能かつ太陽光・蓄電池の恩恵で光熱費がほとんどかかっていない家庭が多いです。

よくYoutubeなどで我が家の電気代などを公開している方がいますが、日々の電気の使用量を見ると面白いくらいに同じ傾向が見て取れます。どのような傾向かというと

・平日・休日問わず一番電気を使っている時間帯は深夜→エコキュート

・早朝と夕方のみ急激に電気使用量が増えて、日中は休日も土日も使用量が少ない

ここから見て取れるのは、朝の仕事前と夕方帰宅時の夕食の時間帯のみ在宅しており、平日は日中仕事、土日の日中は家族で外出などをしており、実際は家にあまりいないということです。

両親と同居や専業主婦(主夫)などで常に誰かが在宅しており、電気使用量が相当多くなる場合は、高気密高断熱住宅のメリットが出てきます。

ちなみにライフサイクルコストの説明で高気密高断熱住宅は修繕費が150万円安くなっていますが、これは多くの場合、高気密高断熱住宅のような高性能住宅になると、外壁や屋根なども良い素材を使う例が多いので、そのへんの維持費が低く抑えられるというだけです。決して電気代の節約とは関係ありません。

みなさんも高気密高断熱住宅を検討する際は、初期費用を光熱費で回収することはほぼ不可能であるという現実を理解し、自身や家族のライフスタイルを確認のうえ、本当に高気密高断熱住宅が必要なのか吟味してください。さらに家は消耗品ですので、どんなに良い家を買っても、永遠に長持ちするわけではなく、いつかは建替の日がくるということも理解しておきましょう。