高気密高断熱住宅の試算する電気代シミュレーションは全くあてにならない!

いつも思いますが、シミュレーション結果とか、広告やパンフレットに書かれている数字って、作成者の都合でいくらでも変更することができるんだと思います。

高気密高断熱住宅って高いじゃないですか。でも今すごく売れているんですよ。

別に特段デザインが優れているわけでもなく、売りは夏涼しく、冬暖かいということなんです。でも、はっきり言いますけど、今どきのローコストでも築浅の安い中古住宅でも、最近の家なら、エアコンである程度暖かくなります。

高気密高断熱住宅の販売者が言いたいことは、いかに安い電気代で家中を暖めることができるか!という点なんです。

日本人、特に男性は数字の比較が大好きな方が本当に多いです。

ゲームや音楽なども売上ベスト10とか、好きな街ランキングとか、ゲームでもRPGなどでHPや攻撃力の比較など、とにかく数字で物事を比較して、優れているものに大きな価値を置くのです。

家って意外と数値化できるものが少なく、思いつくのは、土地の広さや家の大きさですが、正直核家族化が進む現代において、むしろ小さい方が好まれるので、あまり優劣の対象にならず、他は家の価格や施工するハウスメーカーとかですが、好みがあったり、設備の量などで価格も変わるので、同じ条件で比較できる数字って中々ないんですよ。

そんな中で、断熱性能を示すUa値や気密性能を示すc値や年間の電気使用量や電気代、無暖房時の室温、太陽光発電量、売電価格などの数字比較が最近流行りだしたので、家に対する価値観がすっかり変わってしまいました。

YouTubeや個人のブログなどでは、「私の家の住宅性能を公開します」やら「今月の電気代」やら「室温比較」やら「太陽光の売電収入」やらの内容で、とにかく高気密高断熱住宅の数字が優れていることをアピールです。

一昔前の住宅に対する価値観は、見た目のオシャレさやキッチンなどの設備のグレード、建設するハウスメーカーのブランド、玄関に入った時のゴージャスさなどの見た目や使い勝手重視の家選びでしたが、今は多くの方が数字競争に走っています。

そんな流れに多くの住宅会社が便乗し、しきりにUa値の高さや年間電気代の低さなどをアピールするようになりました。

もちろん快適性を第一に考えて、高気密高断熱住宅を選んでいるとは思いますが、どこかで数字で優れた家をほしい!という一種の洗脳のようなものを植え付けられている気もします。

例えば、快適性が変わらなくても、少しでもUa値が良い家に住みたいとか、電気代をいかに低く抑えられるかとか、太陽光の売電収入を使って、実質の電気代をいかに0にするかなど、

ある意味、自分の家を使って実験のようなことをして遊んでいるようにも思えます。

こうなると、高気密高断熱が正義で、例え価格が高くなっても、買うべきだという考えになってしまいます。

実際私も、某大手住宅会社のパンフレットに、高気密高断熱住宅に住むと、30年で1000万円の電気代が節約できますと書いてありました。

その節約額の根拠を見て愕然としたのですが、

対象の住宅はほぼ無断熱住宅で、全館冷房で5月~9月は24時間冷房26度設定、10月~4月は24時間暖房で22度設定という鬼畜な環境です。

申し訳ないですが、昔の家で、24時間エアコンをつけている家庭なんて聞いたことがないですし、結局1年中冷暖房を24時間使用していることになるので、ありえないです。

日本だとエリアによりますが、多くのエリアでは4月下旬~6月上旬、9月下旬~11月上旬の4か月程度は冷暖房を使っていない家が多いのではないかと思います。また、家じゅう冷やしたり、暖めたりなんて昔の家でできませんから、エアコンは常にフル稼働になりますし、多くの家では、人がいる時間、いる部屋だけ空調するのが普通です。

実際、平均的な年間の空調費は、5万円程度だと聞きますから、仮に高気密高断熱の空調費が1万円で収まったとしても、年間4万円の差額です。30年で120万円の差額にしかなりません。

これが現実なのに、1000万円も節約できるんだから、高価格の家を買いましょうと勧めてくるのです。

多くの人は数字の比較が好きですし、数字の良い優れた家が実質電気代で1000万円節約できたら、ローコストとほぼ実質同額で買えると勘違いして買ってしまうのです。

間違いない事実なのでお伝えしますが、初期費用と維持費も全て加味して、ローコストと高気密高断熱住宅を比較したら、今後電気代が相当高騰しない限り、間違いなくローコストの方が安くなります。少し考えれば分かるのですが、購入時に1000万円差があれば、それを埋めるには相当時間がかかります。毎月の光熱費を1万円安くできても、年間たったの12万円の差です。1000万円になるには、80年以上かかります。家の性能が良くなると、外壁や屋根が長持ちすると言いますが、50年で200万円程度の差です。

実際の例を見ると分かりやすいですが、最近の新築は例えローコストの最安値水準だろうと、結構性能は良いです。同じ条件ならば、対して光熱費に差は出ないのが実情です。

確かにほぼ年間冷暖房を全館で24時間使っていれば相当な光熱費の差が出ますが、実際、ほとんどの家庭が冷暖房などは可能な限り節約すると思います。私の周りでは、一般的なローコストを買った方のほとんどが共働きで、平日は朝の数時間と夜の数時間だけ冷暖房しますし、土日も子供のイベントや買い物やお出かけなどで、日中は留守にしているので、結局土日も日中は数時間程度の使用ですし、夜も寝室に集まって寝るので、オール電化で毎月の冷暖房費用は年間3万円程度のようです。結局多くの人は節約するので、我慢できるところは我慢しますし、使用時間も短い方にとっては、そもそも冷暖房費があまりかかってない方が多いです。このような方が、高気密高断熱住宅に住んだとしても節約できる額は最大年間3万円なので、50年でも150万円の差にしかなりません。絶対初期費用は回収できないですね。もし、平日も休日もほぼ24時間誰かが在宅していて、家族が多くて、家中に人が分散していることが多いような家庭の場合は、冷暖房費が年間20万とかになる可能性があるので、その場合は高気密高断熱住宅にして、年間の光熱費を5万円まで削減できれば、年間15万円の節約になり、50年で750万円の節約につながるので、今後の電気代高騰も勘案すれば、快適性の向上もあることを考えれば、割がいい投資になるはずです。こんなに在宅する家っていうのは、夫婦どちらかが専業主婦か主夫で、親と同居して、子供もたくさんいる大家族の場合なので、多くの方の生活スタイルとは異なるかもしれません。

まずはご自身の実際の年間の冷暖房費を試算して、今後の家族構成や生活スタイルなども予想して、高断熱高気密にすべきか慎重に検討してください。間違っても、住宅会社が提供している電気代シミュレーションだけは鵜呑みにしないでください。