4節 貿易黒字と国内投資のトレードオフ

 よく評論家が述べる典型的な誤りについて指摘する。よく国内の雇用保護と経済の発展のために国外投資を減らし国内投資を増やして企業の誘致をはかると共に貿易黒字を拡大しようという考えが示される。これは絶対に不可能な理論なのである。

 これをすると完全なお人好しになってしまう。国内投資とは簡単に言えば,国の資産を外国に売る行為なのである。日本に来る企業は買収であれ,純粋な進出であれ日本にお金を払う。これでは,日本にはお金が入りっぱなしで相手国の支払いが滞り,取引が破綻する。貿易黒字の国は必然的に国外投資をするようになる。そうすると国内の企業が相対的に減り,輸出が減って,輸入が増えるので自然と貿易黒字はなくなっていくのである。

 経済は自己治癒性を持っているのでほっといてもうまくいく事が多々ある。

 次回は貯蓄のパラドックスについて説明する。