13節 共有地の悲劇

みんなで共有の池をもっていてそこには食用の魚が沢山いるとする。

 魚を一定数残せば,来年も繁殖して今年と同様に魚が捕れる。この場合,うまくいくだろうか?

 残念ながら答えはノーだ。

 この場合の問題は,魚を収穫した時の便益は自分一人で享受できるが,費用を利用者全員で分担する点だ。つまり,収穫する事による費用を過小評価するため,みんなが過剰に乱獲をして魚がいなくなってしまう。

 各々が自分の行う事の費用を過小に評価するために起こるこの問題を共有地の悲劇という。

 みなさんが抱える最も大きな共有地は何だろうか?

 地球である。

 つまり地球を汚す事による便益は各自が享受できても費用は人類で分担して負担する。よって費用は無視できる位小さくなる。

 このため手間がかからないという便益を求めて多くの人間がゴミのポイ捨てを行う。地球温暖化の問題もある国が温暖化の費用を過小に評価しているために生じる。

 身近な例で言えば,居酒屋の割り勘とみんなでやる鍋が挙げられる。

 どのように共有地の悲劇が生じるか分かるだろうか?

 まず居酒屋の場合,各自が自分の食べたいモノを頼めばそれを割り勘で支払うので,4人ならば費用は4分の1になる。飲み物はより顕著で1人で飲むときより安く飲める。よって過剰に頼む事が得になる。但し,4人とも同じ考えなので,各自が他の3人の費用を負担しなければならなくなり,結果的に過剰に飲食をした上,会計も多くなるので1人の場合より非効率である。

 鍋の場合,各自にとって最適な選択は,自分の食べたい具を好きに食べる事である。もちろんその費用は鍋をやる全員に均等に負担される。なので,もう少し火を通した方がおいしい具材でも取られまいと早く食べてしまうので,非常に非効率である。

 共有地の悲劇の解決方法はないのだろうか?

 使用を有料にする事が1つ考えられる。

 地球温暖化問題でいう排出権取引もこの手法の1つである。

 排出権取引とは,国ごとに二酸化炭素の排出量を決めて,余った所が上限を超える所に売買する事を認める方法である。

 省エネを進める国ほど有利になり,地球を汚す費用を間接的に認識させる方法である。

 タバコも同様に税という形で費用を負担させている。

 第二の方法は,誰かに所有権を与えてしまう方法である。

 最初の池の例で言えば,所有者は利益が最大になるように魚の収穫量を決め,各自に有料で売るので,各自が費用を正しく認識する事になる。

 最後は掟破りに罰を与える方法である。

 先程の鍋の例で言えば,鍋奉行がそれに当たる。つまり,みんなの利益を無視する自分勝手な行動者に罰を与える役割である。勝手な行動をすれば鍋が食べられなくなると各々が認識すれば,鍋も効率よく進む。

 昔の日本では,村の掟というモノが決められており,破った者は村八分という罰を与えられていた。

 次回はフリーライダー問題について説明する。