住宅ほど価格が分かりにくい商品は他にありません!

家を買った人でさえほとんどの人が住宅の価格の裏側を理解できていないと思います。

新築に関して言えば、

家の価格=(木材や建具、設備などの原価)+(大工等の人件費)+(工事に係る諸費用)+   

     (メーカーの利益)

大きくこの4つに分けることができます。

例えば全く同じ家を建てたとしても、ローコストメーカーとハウスメーカーでは大きく価格が異なり、やはりローコストの方が数百万円安く建てられると思います。

どうゆうことかというと、ローコストメーカーは基本企画住宅という予め間取りや仕様が決まったプランをいくつか用意しており、その中から選ぶようにしています。

何がいいかって、使う木材の形や建具や設備などがすべて予め決まっているので、同じものを大量に発注し、同じ設計図に基づき作ればいいので、大量仕入れで(木材や建具、設備などの原価)が安くなりますし、同じものを量産するので大工は作業に慣れていき、早く正確に作れるようになります。よって1住宅当たりの(大工等の人件費)は低くできます。

さらに工事にかかる諸費用も低くできます。同じ家をいくつも作るので、チェック項目も同じになり、効率的に中間検査などの準備ができます。また一般論ですが、チェックの厳しさやチェック項目、頻度の多さも信頼を第一にしているハウスメーカーの方が圧倒的に多い傾向があり、その手間賃の違いも大きいです。

最後にメーカーの利益ですが、ローコストメーカーは薄利多売なので、1棟当たりの利益分は少ないです。

つまり、企画した箱ものを販売するので、最初から設計する注文住宅に比べ、1人の客にかける時間と費用は圧倒的に少なくなり、利益率を抑えても十分利益が残るというわけです。

結果回転率も高くなり、少ない利益でも年間の棟数を増やして、多くの利益を得ています。

さらにハウスメーカーは、モデルハウスを用意していたり、広告費や来場者にQUOカードなどの特典を大盤振る舞いで配っている傾向があるので、その分利益を多く取り、その経費を賄っています。

結局、正当な方法で行けば、全く同じ材料で同じ形で同じ性能の家を建てるとなれば、ローコストメーカーはお得になります。しかしながら、車などの製品と違い、家は多くの部分を人の手で作ります。料理と同じで、同じ野菜と肉と調味料を使っても、作る人によって出来上がりの味は全く異なるものになります。見た目が同じなので厄介ですが。

きっと見た目同じカレーでも、素人の私が作ったカレーと、プロの料理人の作ったカレーでは味は全く別物でしょうし、食べる人も何倍も多くの金額を出すはずです。

では、見た目全く同じ家で、すべての仕様や性能が同じ家を複数のメーカーが作っているとして、価格が1000万円単位で異なっていた場合、最安値のメーカーに頼むのが良いのでしょうか。答えはノーです。もし、その最安値メーカーが素人の大工に施工を頼んでおり、施工の段階でミス多発で、隙間だらけ、欠陥だらけの家を建てていたら、20年後はぼろぼろになるかもしれません。

もし新車ならば、どこのディーラーで買っても、作り手が同じなので、同じ車が納車されます。

つまり1円でも安いお店で買うのが正解になります。

しかし、家は見た目一緒でも全く別のものだという認識が必要です。

結論、お得な買い物だったかどうかは、住んで30年以上経過しないと分からないわけです。

今目の前に全く見た目も仕様も性能も同じ家が2棟並んでいて、片方はローコストメーカーが1500万円で販売しており、もう一方は大手ハウスメーカーが2500万円で販売していたとしましょう。

初期費用が安いのは1500万円のほうですが、ローコストの家は、チェックも甘く、大工の技術も未熟で、隙間が多く、釘の数や位置なども間違えていて、断熱材もうまく充填できていないとしましょう。この家は冬に隙間風が多く、断熱材がずれて、断熱ができていない箇所があり、毎年の光熱費も数万円単位で異なり、家が雨漏りや内部結露等で急速に傷みます。

30年後、ローコストの家はカビや白蟻や雨漏りでとても住める状況ではないので建て替えるとしましょう。そうなると取り壊しの費用、建替えのための引っ越しや短期滞在する賃貸費用、様々な諸費用、30年後間の物価上昇、長期による金利負担などで、2000万円は別途かかります。その後30年また暮らすとなると、60年で3500万円になります。逆にハウスメーカーの家は、しっかり作られているので、60年建替不要で、30年の節目に500万円のリフォームで、引き続き快適に暮らせるとしましょう。

結果、60年で3000万円の負担となり、単純に快適な家に住み続けることができるのに、500万円も安くできます。

この話から分かるように、家だけは車などの他の商品と全く異なり、購入後60年程度の総コストを意識して、質の良いものを選ぶ必要があるので、決して価格だけで選ばないようにしましょう。