太陽光発電標準搭載の罠~目先のお得感に惑わされないで!~

最近増えましたよね。国が推進していることもあるかと思いますが、大きな影響を与えているのは、最近躍進し、日本1位に迫る勢いで業績を上げている全国規模の大手工務店だと思いますね。この工務店は非常に特殊な販売戦略を取っており、既に建てた施主に自社の商品をPRさせております。YouTubeなどでは、この工務店のルームツアーだらけで辟易しております。

というのも、この工務店の家は注文住宅と言いながら、ほぼ企画住宅となっており、蓋を開けば、どれも似たりよったりの家になるからです。間取りなどに制約が多すぎて、自由に選択できると言いながら、結局会社の言いなりに家を建てざるを得ないのが現状のようです。

キッチンや備え付け家具なども自社製品で固めており、他社を使おうとすると、ものすごい差額を請求されるので、ほとんどの方は自社製品を使います。大手ハウスメーカーとの圧倒的な違いは、住宅の気密・断熱性能です。

つまり夏は涼しく、冬は半袖でも過ごせる暖かい家を売りにしております。

数字好きな日本人には受けがよく、宣伝が上手なので、お金に余裕があって、少しでもお得に家を買いたい小金持ち層に大人気なわけです。そしてほぼセットで太陽光発電と蓄電池を導入させるのが基本となっているため、この工務店の家には9割以上の確率で太陽光パネルが搭載されております。

新築時に太陽光を載せるのは工務店側からすると大きなメリットとなります。

まず、導入費用は住宅価格に含めることができ、35年ローンなら35年間で支払うので月々の支払がそんなに増えないんですね。しかし、毎月の売電収入は最初の10年間は大きいので、つけた方がお得と錯覚するんですね。

具体的な例を挙げましょう。

今ここで新築に太陽光をつけた場合とつけなかった場合を考えます。

特にこの工務店のように屋根一体型のパネルを載せる場合と載せない場合で比較します。

・太陽光を載せる場合

住宅総支払額:3500万円

太陽光10キロ、蓄電池:200万円

毎月のローン:10万円

最初の10年間の売電収入:毎月平均2万円

電気代の削減額:毎月5000円

実質の毎月の支払額:7万5000円

・太陽光を載せない場合

住宅総支払額:3500万円

毎月のローン:9万4千円

実質の毎月の支払額:9万4千円

この両者を比較すると、太陽光を載せない理由はないくらいに太陽光を載せた方がお得となっております。

この話には2つの罠があります。

1.載せる方向に誘導したいので、載せない人に割高になるように価格を設定している。

  むしろ、太陽光を載せた3700万円が適正価格で、載せない場合の3500万円が

  ぼったくり価格なのです。

  よくこの工務店の太陽光と蓄電池は大容量なのにセットで200万円で破格などの

  話が出てきますが、実際は、200万円では大赤字だと思います。これは内訳を変えているだけ    で、全く意味をなさない数字です。すべてセットで3700万円なだけで、太陽光・蓄電池不要な方は、気持ち200万円値引いてあげますと言ったほうが正しいです。現に標準性能の床暖房は完全に価格に組み入れられているので、内訳金額が分からないですが、もし床暖房不要だと答えても、50万円程度しか安くならないようです。

  これは床暖房の原価が50万円というわけでは決してないです。もしいらない人がいたら気持ち値引いてあげるという意味です。これは営業の方も言っておりましたが、家の作り自体はローコストに近く、但し、ローコストと違って断熱材を大量に入れたり、床暖房や換気システムなどの設備をふんだんに利用しているだけで、根本はローコスト住宅なんです。

  実際は太陽光と蓄電池も家を建てない人が、この工務店に依頼して、実際に施工してくれるとすれば、絶対に200万円では無理です。多分売ってもくれないと思いますが、適正価格を算出すれば、400万円ちかくになる可能性もあります。結局家を建てる人は、住宅価格から利益をたっぷり取っているから200万円と表記しているだけです。

2.10年以降は全くお得ではない。

多めの太陽光を搭載させて売電価格を高くして儲けが出るように設定しておりますが、10年経てば売電はできなくなります。また蓄電池も10年程度で壊れる例が多いので使えなくなる可能性が高いです。そうなると自家消費以外の発電分はほぼないことになりますので、つけていても蓄電の効果もなくなり、実質電気代が3000円安くなるくらいです。雀の涙程度の売電価格も得ることができますが、パワコンの故障修理代などでトントンになると考えております。こんなでかい設備を維持しようと思えば修繕費なども大きくかかるからです。

となると10年以降は実質9万7000円の支払額になり、逆に損する可能性が高いです。

個人の未来予測は実際せいぜい数年程度です。10年以上先の未来は漠然としか考えていません。

漠然と老後を心配していても損得勘定で計算しているわけではないです。

なので、例え35年の住宅ローンの毎月の支払額が5000円増えようと、毎月売電で2万円利益が出ると聞けば飛びつくわけです。

このからくりを理解して地元工務店なども最近太陽光を標準装備してきています。

この工務店の作り出したからくりにより今全国で住宅価格が値上げしている状況を隠すためにも太陽光を推進しています。

住宅価格が上がった理由があたかも太陽光がついたからと言えるような状況を作っているようにも思えます。

太陽光発電自体は全く悪いものではなく、条件が合えば、すごくお得な設備です。

但しこれは自家消費分を賄う容量の場合です。

必要以上に取り付ければ、10年後の売電期間が終わった後に使い道がなくなり損をする可能性が高いです。

その頃に蓄電池が安く、高耐久になっていれば良いですが、確証はないですし、そもそも、10年後は今よりよい発電システムが確立している可能性だってあります。

総合して考えると、投資的な観点ではお勧めできないので、光熱費を削減でき、結果的にお得になるかもくらいで小規模でやるのが良いと思います。

家電は特にそうですが、年々性能が上がり、価格は下がるということを続けております。

今は屋根中に太陽光を載せる家が増えておりますが、10年後には、1枚の小さいパネルを庭に置いておくだけで、同量の電力が得られる時代になっているのかもしれないです。

技術は、日々漸進(同じペースで進歩を続ける)のではなく、ある時イノベーションが起き、

1→10000のような進歩をすることがあるのです。

昔は数百万円したステレオでしか味わうことができなかった音を今は数万円のスピーカーで再現できるほどです。テレビも20年前の200万円のテレビより今の10万円のテレビの方が省エネかつ高画質・高機能です。

私が子供の頃はカセットテープに音楽を入れて同じ曲を何回も聞いていましたが、今は月額500円とかで知っているほぼすべての音楽を聴き放題です。もし30年前にアマゾンプライムなどがあったら、月額1万円でも利用する人が多数いたでしょう。

話がだいぶ逸れましたが、太陽光にしても住宅性能にしても、今から30年間の光熱費が削減される費用などを皮算用で計算し、お得かどうか判断する風潮がありますが、10年後の光熱費なんて誰にも分かりませんし、200万円近くお金を使っても、10年で利益は出ても30万円程度です。その後は、ほぼ自家消費を賄う程度の節約になるので、年間10万円利益が出れば御の字でしょう。その代わり、年数が経てば、20~30万円の修理費がかかったり、故障すれば撤去に30万円程度かかることもあるので、不確実な状況で20年で50万円くらい利益が出ればいいと思います。

実際200万円の投資で20年で50万円の利益ってどうなんですかね。

例えば、200万円を年利1%の住宅ローンで借りて、20年かけて返済すると220万円程度の返済額になります。実質20年間で30万円の利益になりますので、年利1.4%の投資商品になります。

この場合、200万円借金して年利1.4%の金融商品に20年間投資するのと結果は同じなわけです。

しかし、金融商品のほうがずっと楽です。なぜなら太陽光は維持管理費用を施主が負担しないといけないからです。もちろん屋根の劣化は進みますし、頭に数百キロの重りを何十年も抱えるわけですから家の寿命も縮みます。

また、メンテの手間も施主の時間を奪いますので、その分も費用にすると結構なものです。

どうですか?それでも太陽光を導入したいと思いますか?

もし太陽光が50万円程度で購入でき、少し高い家電という認識で、自家消費分を補うつもりで導入すれば、一括で買えますし、容量を少なくすれば軽いから屋根への負担も少ないですし、ほぼ間違いなく20年でそれなりの利益を生み出し、省エネ・創エネ家電として活躍するはずです。

結論として、どこかの工務店のように無駄に大量に屋根に載せるのではなく、自家消費分を補う家電という考え方で最小限で導入するのがおすすめです。