無暖房時の室温から家の断熱性能が分かります

最近の住宅は、断熱性能を示す数値でUa値というものを公表しております。

Ua値はざっくり言えば、熱の逃げる量を示すのです低ければ低いほど熱が逃げにくい、冬ならいつまでも暖かく、夏なら外の暖気が入ってこない涼しい家になります。

凡そ基準が定まっており、東京や大阪などの大部分の人口が集まっている地域(断熱では6地域という)を基準に説明します。

Ua値 0.87→次世代省エネ基準

無暖房時の室内体感温度が8度を下回らない基準となっています。

こう聞くと滅茶苦茶寒いですよね。

だいたい東京などでも冬場は0度まで下がることも結構あるので、その時点の早朝が最も寒くなると思いますので、無暖房だと8度くらいになる可能性が高いです。

はっきり言って寒い家だと思います。

しかし、残念なことに今の日本の新築の多くがこの基準になっています。

なぜならば、この基準を国が「次世代省エネ基準」と呼んでおり、新築建売なども、この基準さえ満たせば高断熱住宅と呼んでも、世間に認められてるからです。

この記事を読んでいる皆さんは、きっと断熱の知識が豊富なので、Ua値が0.87と聞けば、かなり断熱性能が悪いなと思われると思います。

実際2025年度からは、断熱基準が厳しくなる予定で、Ua値0.87が建築時の断熱性能の最低基準になる予定です。

つまり、この基準を満たしていない限り、建築ができなくなる可能性が高いので、もはや高断熱ではなく、最低の断熱基準になりつつあります。

ここ数年断熱性能への関心が急激に高まっておりますので、今から住宅購入を検討される方は、後に申し上げるHeat G2基準は最低でも満たすようにしていただきたいです。

Ua値 0.56→Heat G1基準

無暖房時の室内体感温度が10度を下回らない基準となっています。

結論から言うと、まだまだ寒いです。

10℃の体感温度は、ガクガクブルブルではないと思いますが、ひんやりして、無暖房で我慢するのは少々厳しいです。

Ua値 0.46→Heat G2基準

無暖房時の室内体感温度が13度を下回らない基準となっています。

断熱に詳しい方の間でも、この基準をクリアしてくると高断熱と呼んで良いという見解が一般的です。

実は私の自宅がUa値0.49でG2基準に近い家となっておりますが、確かに外気温が0℃くらいの日の早朝は、無暖房なのですが、だいたい室温が12度~13度くらいになっているので、基準としては間違っていないと思います。

Ua値 0.26→Heat G3基準

無暖房時の室内体感温度が15度を下回らない基準となっています。

世間では、超高断熱住宅とか呼ばれています。

G3基準は賛否両論で、この基準を絶対満たすべきという意見もあれば、寒冷地でなければ、G2で充分という意見も多いです。

G2とG3の違いについては、無暖房時の体感温度に2度違いがあること、暖房時の光熱費について、年間2万円程度差が出るというところです。

※G2、G3どちらが良いのかの判断基準はこちら

実はこのUa値の数字ってかなりあてにならないです。

Ua値ってある意味理論値なんです。

期待値というば良いのか・・・・・・非常に数学的な話になっているのですが、

要は個別の住宅を1件1件調べて、その家毎に数字を算出しているのではなく、

目の前に、ある家を想定して、その家の床、壁、天井の面積や窓などの開口部の面積

を調べ、それぞれの部位にどのような断熱材や部材をどれくらいの厚みで入れているか

などの情報を確認し、計算すれば家のUa値が出ます。

なので、例えば、全国に全く同じ仕様の家を1000棟建てたとすれば、それらはすべて同じUa値になります。

車で言えばカタログ燃費のようなものです。

〇〇社の◆◆車の燃費はリッター30㎞と言っても、実際は個々の車で全く異なる燃費を示します。多分同じ運転手が全く同じ運転で同じ道を運転しても同じ車種の違う車では結構燃費に開きがあると思います。

理論Ua値が同じでも、実際の断熱性能に大きな開きが出る可能性は以下の3つが原因です。

・施工の精度が違う

・商品の品質に差がある

Ua値に含めないが、断熱性能に影響を与える設備や部材が結構ある

断熱材なども、細かい傷がついていたり、湿気を含んでしまっていたり、そもそも全く同じ厚みでなく、厚みにむらがあったり、ガラスも充填しているガスが実はだいぶ抜けていたりなど商品ごとに品質のむらはあります。

また施工する人によってかなり変わります。天井にグラスウール200ミリの断熱材を敷くとしても、隙間があれば、その部分は無断熱になりますし、壁の断熱材も、一部ずれ落ちていたり、中に湿気が入って、カビが生えてぺちゃんこになっていたりと、個々の家で状況が異なります。

もちろん、床材や壁のクロスなどの種類によって断熱性能が異なります。断熱材ほどではないですが、無垢床であれば、別の床よりも断熱性能が高いですし、壁もビニールクロスでなく、珪藻土や漆喰でしたら保温効果が高いです。窓付近もハニカムシェードをつけていると断熱性能が上がりますし、壁に備え付けで付けている本棚やキッチン、カップボードやクローゼットなどは、木の厚み分断熱効果があります。

これらの点を考慮すると、Ua値が良いのに寒い家やUa値が高くないのに暖かい家が出てきます。

施工精度が悪く、床材や壁などの断熱性能が悪いけど、理論値がUa値0.46の家よりも、施工精度が良く、床材や壁などは断熱性の高いものを使い、すべての窓にハニカムシェードをつけているUa値0.56の家の方が、無暖房時の室温は高いかもしれません。

結局は、各家の外気温と室温の差を確認し、一時間当たりにどれくらい室温が低下するのかを調べ、断熱性能を比較するしかありません。

一番手っ取り早い断熱性能の調べ方は、暖房を消した後、一時間おきにどれくらい室温が低下するのか調べる方法です。

私の家では,理論上のUa値と体感温度を確認のうえ、自身の家のUa値と無暖房時の室温が大方一致しているので、無暖房時の室温からある程度Ua値を逆算できるのかなと思います。

例えば、今年一番の寒さの日(最低気温が0度以下)のできるだけ早い時間からエアコンを切っており、翌朝の7時とかの夜明け前に家の中で最も寒いと思われる場所で室温を測定してください。大抵北側1Fの端などが最も寒くなります。

そこの室温が10℃付近ならUa値0.56程度の性能、15℃キープしていればUa値0.26程度の

性能とある程度予測できます。

もし、理論値のUa値と室温から推察するUa値に大きな開きがある場合は、何か欠陥があるか、施工精度が悪い可能性があるので、住宅会社にそれとなく相談してみても良いかもしれません。